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人擁法の政治的関係図と影響 [┌人権擁護法案]

・人擁法の政治的関係図

 

名称が同じでややこしいですが人権擁護委員については、3種類に分けられます。

1.現行の人権擁護委員(人権擁護委員会法によるもの)
2.弁護士会の人権擁護委員会
3.人権擁護法案でいう所の「人権擁護委員」

法案の人権擁護委員=現行人権擁護委員+弁護士会人権擁護委員会

という図式になるかと予想されます。

1.現行の人権擁護委員会

 約1万4千人として法務局下に設置しボランティアとして既にかなりの年月活動しています。過去実績として、おおよそ年間9千件の法務省通知(→法務省として受理)、また相談件数は36万件との事です(委員だけの単独相談数なのかなど詳細不明。要裏付け調査)。過去の公式の記録として「人権擁護委員に対する評価というのは非常に良くない」との発言が法務省人権擁護推進審議会第60回会議議事に残っています。(発言者や評判の中身等の詳細は不明)

「現行人権擁護委員」は自動的に「法案の人権擁護委員」に移行します。(附則第二条、下の方に書いてあります。

○現行の任命

文京区の人権擁護委員の選任(一瞬で終り)議会運営委員会会議録(平成15年10月10日)という記録が残ってます。(他の議会も見ましたが、詳細な議事が残っていないため内容不明です)

 豊中市では人権擁護委員が自動的に「男女共同参画苦情処理委員会」にもなっています。(→男女共同参画苦情処理制度 平成15年(2003年)11月15日からスタート

また、島根では人権擁護委員が「感染症診査協議会」にも参加しています。(→感染症のまん延の防止のための施策

他にも探せばあるとは思いますが、各地方公共団体において、現行人権擁護委員が各方面にその肩書きで参加できている現状があるのが分かるかと思います。これは、法定上認められた権限ではないとは思いますが、実質的に発言権を得てる現状があると思われます。

 ○小まとめ

・文京区議会議事録を見る限り、厳密に議論して選任してない
・法務省第60回審議会では「評判よくない」との発言
・地方公共団体で自動的に他の役割も担っている

2.弁護士会の人権擁護委員会

弁護士法により、弁護士への強制加入を義務付けられている弁護士会にも「人権擁護委員」が設置されています。以下引用

1949年(昭和24)公布の弁護士法にもとづいて組織され、広範囲の自治権をもっている。弁護士会とならんで、個々の弁護士に対する懲戒権、資格審査権を行使するが、これについていかなる国家機関の監督もうけない。
Microsoft(R) Encarta(R) Reference Library 2003. (C) 1993-2002 Microsoft Corporation. All rights reserved.

以上、日本弁護士連合会(いわゆる日弁連)の項目より抜粋引用

 京都弁護士会によれば、弁護士会の人権擁護委員会は弁護士法第一条を根拠にしているという示唆がなされています。(なお、弁護士法1条は、「弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。」です。→弁護士法全文

○実績
・人権救済申立事件勧告書「定時制高校の統廃合は、定時制生徒及び定時制に入学を希望する人々の学習権の侵害にあたる」と定時制高校の統廃合は人権侵害と断じています。
・大阪弁護士会勧告(「君が代」歌わない自由・起立しない自由、生徒に説明を」)では

入学式においては、「思想・良心の自由」に関する事前説明を全く実施しなかった。」とし「竹下校長の前記(2)の行為は生徒への人権侵害であるから」として

平成15年9月29日付、貴殿よりの申告の人権侵害救済申立事件について、当会人権擁護委員会において調査の結果、下記のとおり処理いたしましたので、ご通
知いたします。

                                   記

1 高槻市立柳川中学校校長に対し、勧告書を提出する。

となっております。

その他にも、徳州会病院における脳死判定には「人権侵害のおそれあり」として立ち入り検査を求めたり(病院側拒絶。なお、申立人の岡本隆吉氏は社民党衆議院議員の第一秘書と同じ名前ですが・・・?)ちなみに脳死判定については大阪府立千里救命センター古川市立病院高知赤十字病院に対しても人権侵害だとして勧告されています。(反対なら堂々と反対すればいいのにと思いますが・・・)

こちらでは、「研究等を中止・変更するよう勧告が出来る権限を」とあります。(ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)に対する意見の整理表 (4-6))これまた、人権が出てきます。(→中止権限は、倫理審査委員会に対してのものとの指摘がありました再確認したところ私の読み間違いの可能性ありましたので、お詫びすると共に、小まとめを削除修正させて頂きます。失礼しました。2005/4/16 8:24)

○小まとめ

・国歌を歌わない自由を事前説明しないのは人権侵害と断定
・病院の判断についても、人権侵害の名目で勧告
・定時制高校統廃合についても人権侵害と勧告(追記)

3.人擁法(案)の人権擁護委員

 上記2つの人権擁護委員のうち、現行の人権擁護委員は自動的に法案の人権擁護委員に移行しますが、弁護士会の人権擁護委員もほぼ間違いなく移行するでしょう。その管轄範疇は医療、研究、教育、企業、言論(ネット含む)など極めて広範囲にまたがります。これは国連のパリ原則(→山崎公士氏翻訳、→法務省仮訳)が想定していると予想する人権侵害を遙かに超えた内容であり、仮に定時制学校の統合でさえ人権侵害とする発想を転用するなら、社会保険庁の廃止も、職員にとっては人権侵害であると判断する事ができ、「利害関係があり損する人がいる事」を人権侵害とするなら、実質的には様々な利害関係に関与する事ができます。また、船員労働中央委員会の会報(要PDF)には「救済機関としての役割を果たす事となるため」と記載ありますが、内定でも既に出しているのでしょうか?また、船労委はうっかり会報に載せてしまったという感じを受けますが他の団体・組織にも内約束や選出枠でも出しているのでしょうか?文京区議会で一瞬で選出されており、事実上地方議会では形骸化している点を合わせてみれば、その選出基準について極めて興味があります。(2005/4/17労組系を削除、関連を若干修正。調査不足をお詫びします)

  また、人権擁護法案は人権擁護委員に権限が無いから安全とする議論が一部にあり部落解放同盟の機関誌においてもその論を採用しているようですが、もう片方で部落解放同盟は地方人権委員会の設立を要望しており、同時に事務局職員への採用を嘆願しています。特記すべきは長野、福岡、埼玉などの各地方議会で既に採択しているという点です(→「解放新聞」(2004.10.25) 削除されてしまいました。→キャッシュ保存期間が消える前にご確認下さい)と、片方では、人権擁護委員に権限がないから安全だと叫びながら、しっかり地方人権委員の設置と事務局職員採用の嘆願を出しているのですから、非常に信じられないという感じがします。

 さらに、これは直接の影響ではないのですが、各大学に人権委員会が既に設置されています。国が設立すれば、間接影響としてそのような動きがでるのは改めて考えれば当然の事ではありますが、不覚にも予測できませんでした。当然ながら、国家3委員会として人権委員会もしくは人権擁護委員会に参加している委員などがアドバイザーとして参加するのは自然の流れだと予想しますし、それに反対するのは「国が認めているのだから」と反論されたら極めて難しい。そういえば、企業内にも「当然ながら人権委員会を作れ」という声があがるのではないか?とも予想します。その際、人権委員会もしくは人権擁護委員に選出している団体を顧問に迎えろと圧力があった場合はどうなるのでしょうか?非常に興味深いシミュレーションです。どなたか予想して頂きたい。

○総まとめ

現行小まとめ(再)

・文京区議会議事録を見る限り、厳密に議論して選任してない
・法務省第60回審議会では「評判よくない」との発言
・地方公共団体で自動的に他の役割も担っている

弁護士会の小まとめ(再)

・国歌を歌わない自由を事前説明しないのは人権侵害と断定
・病院の判断についても、人権侵害の名目で勧告
・定時制高校統廃合についても人権侵害と勧告(追記)

総まとめ

・現行の人権擁護委員は法案成立後にそのまま移行する
・弁護士会の人権擁護委員も移行する可能性極めて大
・人権侵害ということばを利用すれば利害関係に関与できる
・予想以上に権限が及ぶ範囲は広い
船労委の委員就任内定しているのか?他の団体組織は?(この部分は再検討中、コメント欄参照)
・地方人権委員会の設置要望を部落解放同盟が出していた
・事務局の職員採用の嘆願も出している
・それら嘆願について一部の公共団体(広範囲?)が既に決議
・大学内に既に人権委員会が出来ている
・法案成立したら企業内にも設置すべしとの声がでるのでは?

(追記1 ヒトゲノム関連および船労委については、いくつか指摘を受けています。まだまだ調査不足の感はありますので、当ブログも細部について事実誤認の可能性はあります。上記については、さらに精査の上、詰めて次期バージョンにてまとめて取り込んで行きます。取り急ぎ、追記1を記載させて頂きます。)

  
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人権擁護法案反対同盟が結成されています。



【関連前投稿】【本日】自民党法務部会第五回 
【関連後投稿】人擁法とセット?ジェンダーフリー 


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コメント 17

上田真司

こんばんわ。
お疲れ様です。「人擁法の政治的関係図と影響」参考になりました。
「自民党法務部会」見送っても、見送っても、審議を継続してますね。
いい加減諦めて欲しいです。
by 上田真司 (2005-04-16 01:22) 

the last sound

はじめまして。いつも詳細な調査に基づくエントリ、興味深く読ませていただいております。

ところで、

>こちらでは、「研究等を中止・変更するよう勧告が出来る権限を」とあります。
>(ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)に対する意見の整理表 (4-6))
>これまた、人権侵害が出てきます。

この部分は、ご紹介の資料にある日弁連人権擁護委員会の池田伸行氏と光石忠敬氏の意見「指針違反が著しい一定の場合に調査し、研究等を中止・変更するよう勧告が出来る権限も与えるべき」のことを差しているのだと思いますが、これは弁護士会の人権擁護委員会に研究等の中止・変更の勧告の権限を与えるべきと言っているわけではなく、ヒトゲノム・遺伝子研究の倫理審査委員会にそれらの勧告の権限を与えるべきと言っているのではないでしょうか。

もし私が鷹森さんの文章を読み違えているのでしたら申し訳ありません。ただ、鷹森さんの書き方だと、そのような(つまり、ヒトゲノム・遺伝子研究の中止・変更の勧告ができる権限を、弁護士会の人権擁護委員会に与えろと日弁連が主張しているかのような)印象も受けますので、ひとこと指摘させていただきました。

ところで、この「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針(案)に対する意見の整理表」、おもしろいですね。各人の意見に人権擁護法案の議論で見られるものと通じるものがあるような。反対派はこれを読んで、法案の内容のつつき方を勉強するといいかもしれません(笑)。
by the last sound (2005-04-16 06:38) 

takamori

上田さん、コメントありがとうございます。まったく廃案にしてほしいですね。
the last soundさん、指摘ありがとうございます。確認したところ、私の読み間違えのようです。さっそく修正させて頂きました。失礼致しました。
by takamori (2005-04-16 08:27) 

takamori

しかし、調べてみて驚いたのは人権侵害とか人権擁護を持ち出せば相当な事に口出しできてしまうという事ですね。まさか脳死判定が検索してひっかかってくるとは予想できませんでした。医療ミスについては、なんらかの調査機関が必要だとは思いますが、何も人権機関が担う必要があるとは思えません。ヒトゲノムの倫理審査委員会にも法律の専門化を最低一人加えるべきと言ってますので、経緯上おそらく弁護士会人権擁護委員からの選出になるのでは?と予想していますがどうなんでしょうかね?もちろん、全部が全部人権の拡大解釈ではなくて、良いことも探せばやっているかもしれないんでしょうが、人権侵害についての勧告について現行の物にも(プライバシーに配慮しつつ)公表するべきだと思います。しかし、しかし、調べるの疲れた。倒れそうですw
by takamori (2005-04-16 08:41) 

Satou

プチ人権擁護法案と言える、川崎市子ども権利条約により
起こった事件のソースです。
http://plaza.rakuten.co.jp/mizuhonet/diary/200503260001/

これは人権擁護法案でも起こりえる事例です。
このような現実に対して、法ばかりを見ている論者は
何を思うのでしょうか。
by Satou (2005-04-16 11:39) 

法律の素人

はじめまして。

人権委員会を企業内にまで設置しろ、ってのは中国の企業内に中国共産党の組織が設置されてるのに似ていて、
日本人権委員党の指導のもとあらゆる日本の会社や組織が支配されてしまう、というのは考えすぎでしょうか?(汗

感情的反対派の僕としては、鷹森さんがしっかり論理的に反対して下さっているので、頼もしい限りです。

大変でしょうが、頑張ってください!
by 法律の素人 (2005-04-16 12:24) 

an_accused

とりあえず一つだけお知らせいたします。 
「船員労働中央委員会」について、「他の労組系は?」と述べておられているところから推察するに、船員によって構成される労働組合の一つであると誤解なさっておられるように見受けられるのですが、「船員労働委員会」は労働組合法第19条の13に基づいて設置されている国土交通省の外局の一つであり、いわゆる労組系団体、組織ではありません。人権擁護法案第67条に「船員労働関係特別人権侵害に対する救済措置」が規定されており、本法案が可決成立すれば船員労働委員会との所掌事務の一部が人権委員会に移るかもしれないわけですから、ニュースレターに取り上げてもなんら不自然ではないと思いますが。
by an_accused (2005-04-17 00:37) 

an_accused

お詫びと訂正
上記コメントの以下の箇所につき、お詫びして訂正いたします
誤:「本法案が可決成立すれば船員労働委員会との所掌事務の一部が人権委員会に移るかもしれないわけですから」

正:「本法案が可決すれば、準用規定に従い国土交通大臣及び船員労働委員会が人権委員会と同様の事務を行うことになるわけですから」

です。全く逆でした。申し訳ありませんでした。国交省の外局を「その他の諸団体」として解同や労働組合などと同列に扱うのは誤りであるという点は変更ありません。
by an_accused (2005-04-17 01:36) 

takamori

an_accusedさん、ご指摘ありがとうございます。
調査不足でしたお詫びします。
精査の上、本文修正もしくは次期投稿に生かします。
by takamori (2005-04-17 16:10) 

実感的反対表明者こと拉致の練習目撃者

貴重な資料の提供を、ありがとうございました。
あまりの内容に、コメントをまとめることも、出来ないくらい・・・・・・。
取り急ぎ、ウルトラグッジョブに、一言お礼まで。

法務部会は、18日か19日にも、あるかもしれないのだそうです。
気持ち悪くてクラクラしてます。
by 実感的反対表明者こと拉致の練習目撃者 (2005-04-17 16:29) 

takamori

船員労働委員会

船員が団結することを擁護し、労働関係の公正な調整を図り、及び船員の労働環境の改善、福利厚生の充実、職業の安定その他船員の保護を図ることを任務として設置された国土交通省の外局

http://www.mlit.go.jp/lcs/iinkai/01.html
委員は3種類に分類され
1.公益委員7名(早い話が部外者大学教授とか弁護士とか)
2.労働者委員7名(35期を見る限り全員が全日本海員組合から選出)
3.使用者委員7名(経営者側という意味か?)
となってますね。an_accused さんの指摘の通り、部落解放同盟と同列に記載するのはおかしいです(あとで修正等を検討します)、それに船労委会報の記載は「人権擁護委員等に選出される」という意味に私は読み解きましたが、「船労委の権限がUPする」とも読み解けます。どちらの意味にも受け取れますが、どちらかというと後者の方が自然な感じがします。(とここまで書いていて、後者だとすると勝手に権限あげちゃっていいのか?という気もしてきますが・・・)。どちらにしろ、当初の予想を超えて影響範囲が広いのは間違いないです(善し悪しは別として)。

それとは別に、労組系団体からの人権擁護委員選出というのは可能性ありなんでしょうか?私は、非常に疑っていて、労使闘争にも影響大だと予測していますが・・・。
by takamori (2005-04-17 16:56) 

takamori

Satouさん、法律の素人さん、実感的反対表明者こと拉致の練習目さん
コメントと応援ありがとうです^^
私もクラクラしてますw私でさえあまりのややこしさに少し混乱気味なのですから、こんなの誰だって混乱すると思います。もう、画面の向こうでゼイゼイ言ってますよw。直接本件には関係ありませんが「政治家は官僚の言いなり」なんて良く言われてますが、「なるほど、こういう風に複雑化して話をわかりずらくすれば時間が無い政治家は余程頭いいか、いい参謀持たない限り、官僚など専門家の言いなりになっちゃうわ」という感じを受けてますね。なんとか話を簡単にしようと奮戦中ですが、元々ややこしい話を簡単にするのは限界がありますね。てんこもり氏が言うところの「感情的反対」ってのは結果的には正解なのかもしれません。つか、そっちが楽だ、絶対楽だ、誰か論理的反対派やってくれるなら喜んで鞍替えしたい気分ですwおっと愚痴になってきた。まぁ、なんとか今後とも頑張っていきます。私も結構間違えるときは間違えてしまうので、ご指導ご鞭撻をどうかよろしくお願いします。
by takamori (2005-04-17 17:19) 

an_accused

>鷹森さま
 詳細なご検討、いつも興味深く拝見させていただいております。
 労組系団体からの人権擁護委員選出というのはありうると思います。但し、それは本法案の成立如何にかかわらず存在する可能性ではないでしょうか。地方議会では人権擁護委員推薦の同意に関しほとんど審議せず採決のみ行っている状況ですので、なかなか人権擁護委員の属性について知ることができないのですが、札幌市議会議事録を例にとると、弁護士、元法務支局長、保護司、アパート業協同組合理事、元小学校長、青年会議所役員などであり、主に保守層の支持を受けやすい人選傾向であることがうかがい知れます。選出過程に大きな変更が見られませんので、この傾向が変化し労組系(旧革新系?)組織団体から人選されるという予測をおしすすめるには、労組系団体と保守政党との大接近などといった政治状況の重大な変化を説明できないと難しいように思われます。
 人権擁護委員の人選に絡んでもう一つ申し上げますと、「法案の人権擁護委員=現行人権擁護委員+弁護士会人権擁護委員会」というのはいささか短絡に過ぎるように思われます。
 「人権擁護委員制度の概要」(平成13年)によりますと、全人権擁護委員のうち約3%(423名)が弁護士ですから、弁護士会における人権関連の委員会活動に熱心な弁護士は既に法務省の人権擁護委員としても活動していると見ることもでき、単純に足し算してよいのか疑問です。
 もちろん、今後の法曹人口増加により、弁護士が人権擁護委員に就任する機会が増加するという可能性自体は否定いたしませんが、弁護士過疎地域においては現状でも兼任していると考えるほうが自然でしょう。人権擁護委員の定員が地域割になっていることから、人権擁護委員の定員不足(約6,000名)を弁護士層から大量に穴埋めしようにも都市部の“人権派”弁護士を直ちに動員することはできません。起訴前における国選弁護制度など弁護士固有の公益的活動領域はますます増大していますから、弁護士固有の領域ではない(少なくとも現在97%が非法曹によって担われている)無報酬の人権擁護委員に弁護士会が大量のマンパワーを投入するというのはあまり現実的ではないように思われますが、いかがでしょうか(もちろん、卑見は根拠薄弱な推測に過ぎませんが)。
 企業内における「人権“啓発”活動」については、おそらく活発化するでしょう。但し、それが“委員会”のような合議組織になるか“コンプライアンス推進室”のようなタスクフォース組織になるか従来型の総務・労務部門が担当するかは「企業しだい」でしょう。大学というのはもともと教授会や理事会など合議制による意思決定になじみやすい組織ですから、“人権委員会”というような名称・組織が作られてもそれほど違和感はありません。しかし上意下達が原則である大半の私企業において、“人権委員会”類似の組織がそれほど浸透するものでしょうか。
 後半の「圧力云々」という部分については、私にはシミュレーションする能力も予定もありませんが、男女雇用機会均等法や男女共同参画社会推進法の施行が企業に及ぼした影響から類推することができるのではないかと思います。
by an_accused (2005-04-17 21:36) 

Satou

>an_accused様
お久しぶりですw

>「法案の人権擁護委員=現行人権擁護委員+弁護士会人権擁護委員会」
が短絡的とのご指摘がありますが、an_accused様はどの様にお考えなのでしょうか?
鷹森様のような式を書いて頂けると非常に嬉しいです。

あと、圧力のシュミレーションですが、先のコメントで私が紹介しましたWEBが、
シュミレーションの参考になるかと思います。
by Satou (2005-04-18 12:03) 

an_accused

>鷹森さま
 よそ様のコメント欄で失礼します。

>Satouさま
 お久しぶりです。
 私は、「法案の人権擁護委員=現行の人権擁護委員」であり、それを大きく外れるようなことはなかろうと考えています。以下推論の理由を申し述べます。
 たしかに現行の人権擁護委員は法案の上限よりも大幅に下回っているが、それは現行法においても同様であり、法案が可決成立したからといって直ちに上限まで増員を図るとは考えづらいこと。現行の人権擁護委員の中には既に弁護士が一定数含まれていること。人口の偏在ぶり(東京:鳥取=1:0.048)よりも弁護士の偏在ぶり(東京:島根=1:0.0028)の方が極端であり、過疎地域においては弁護士会の人権擁護委員会委員が現行の人権擁護委員を兼務しているようなケースが充分ありうること。人権擁護委員が地域割りである以上、弁護士が居住地又は勤務地から遠く離れた地域の人権擁護委員に選任されるとは考えにくいこと。弁護士会は現状でもボランティアで各市町村の法律相談などを引き受けているが、それに加えて法務局の常設人権相談業務や市町村役場の特設人権相談業務を伴う人権擁護委員の担い手まで引き受けるほどマンパワーにゆとりがあるかどうか疑問であること。
 以上より、「無職者(退職者)が約43%を占める現状を大きく変えるほど弁護士層からの就任者が増加するとは思えない」と私は考えるのですが、前コメントでも述べたとおり、卑見は根拠薄弱な推測に過ぎませんし、鷹森氏の「法案の人権擁護委員=現行人権擁護委員+弁護士会人権擁護委員会」という推論を直ちに否定するようなつもりはありません。「そのように結論付けるにはもう少し検討なさるべきファクターがあるのではないでしょうか」と申し上げるに過ぎませんので、悪しからずご了承いただければ幸いです。
 先のコメントにてご紹介いただきました「川崎市人権オンブズパーソン条例」については、ざっくりとではありますが拙ブログにおいても既に触れております。人権擁護法案を考える上で参考とすべき重要な事例であるという点については異論ございません。
 但し、鷹森氏が念頭に置かれている「企業に対し『人権擁護委員を顧問に迎えよ』との圧力が生じうるか」というシミュレーションは、言うなれば「株主権や債権を背景にして総会屋や暴力団が狙った企業に役員を送り込むようなことが起こりうるか」に類似するものではないかと推測しておりますので、「人権委員会の勧告や答申が教育現場等にどのような萎縮効果を及ぼすか」というものとは若干射程が異なるように思います。
by an_accused (2005-04-18 20:08) 

an_accused

卑見に矛盾を感じられるかもしれませんのでなお補足しますと、「法案の人権擁護委員=弁護士会の人権擁護委員会委員」となることは否定しておりません。おそらく現状でもそうなのでしょうから。ただ“+”という表現から「数的に合流する」かのような印象を受けましたので、「ダブルカウントの可能性があるから、“+”で表現するのは妥当ではないのではないでしょうか?と申し上げたまでですので、ご了解下さい。
by an_accused (2005-04-18 20:17) 

takamori

an_accusedさんの意見を受けてさらに調査中に、ジェンダーフリーの話まで出てきた。もう、話がでかすぎ。とてもじゃないけど、細部まで手が回らないし時間も全然足りない。an_accused さん申し訳ないけど、上記の件は調べてもらえませんか?
by takamori (2005-04-19 14:44) 

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